サン=テグジュペリが『星の王子さま』(Le Petit Prince、1943年4月)の12年前に書いた小説。
もともとサン=テグジュペリは作家である以前にパイロットだった。そして作家として世界に名前が知れ渡った後も飛行機から降りなかった。第二次世界大戦中の1944年、彼の駆っていた偵察機は撃墜されて行方不明となり、それが彼の最期となった。2008年にサン=テグジュペリの偵察機を撃墜したとするホルスト・リッパート曹長の証言が公開された。彼自身もサン=テグジュペリ作品の愛読者で「長い間、あの操縦士が彼では無いことを願い続けた。彼だと知っていたら撃たなかった」と話した。
航空業における夜間運行は今では当たり前に行われているが、この小説に描かれた時点では、危険の伴うハイリスクなビジネスだった。
その時代をパイロットとして体験したサン=テグジュペリだからこそ、この作品の持つ厳しさはリアリティを持つ。
筋を楽しむ作品ではなく、厳しさと情景を受け止める作品だと感じた。いくつかの場面で提示された上空からの景色と、地上から機体を見送ったあとの静かな夜の空を、読了後数日経った今でも絵画のように思い浮かべることができる。
キーワード
厳しさ、情景